要約
自閉性バーンアウト(Autistic Burnout)は、ASD成人に見られる 慢性的疲労・ASD特性のコントロール喪失・機能水準の顕著な低下 を特徴とする状態概念です。Raymaker ら(2020)がコミュニティ参加型研究を通じて定義し、長期のマスキング/カモフラージュや、処理能力を超えた社会的要求への曝露が主因とされています。
詳細
「autistic burnout」という呼称は当初、当事者コミュニティ(ブログ・SNS)で自然発生的に広まった用語でしたが、Raymaker ら(2020)が質的研究で概念を整理し、学術的な定義を与えました。彼らの定義によれば、autistic burnout は次の3要素からなります。
- 慢性的な疲労感(cumulative exhaustion)— 休息では回復しにくい消耗。
- ASD特性のコントロール喪失(loss of autistic skills)— 会話・感覚処理・実行機能など、これまで対処できていた領域が機能しなくなる。
- 感覚・認知・社会的要求への耐性の低下(reduced tolerance)— 従来耐えられた環境が耐え難くなる。
症状の持続は通常3か月以上とされ、うつ病と重なる部分もありますが、持続的な気分低下よりも「キャパシティの枯渇」が前景 である点で区別されます。主なリスク要因は、長期のマスキング/カモフラージュ、ライフイベント(就職・結婚・出産等)、感覚的に過負荷な環境、支援不足などです。
回復には、社会的要求の削減、感覚環境の整備、マスキング強要の回避、ASDを理解する支援者とのつながりが重要とされます。DSM等の公式診断ではありませんが、ASD成人支援の現場で広く用いられる臨床概念となっています。
参考文献
- Raymaker, D. M., Teo, A. R., Steckler, N. A., et al. (2020). "Having all of your internal resources exhausted beyond measure and being left with no clean-up crew": Defining autistic burnout. Autism in Adulthood, 2(2), 132-143. https://doi.org/10.1089/aut.2019.0079